- HOME
- ブレーキの保守・修理・メンテナンス
ディスクパットの交換時期について
ディスクパットの交換は、摩擦材の残厚が5ミリ以下になった時点で行うのが一般的です。
しかし、右の写真のように、摩擦材と金属プレートの境目に亀裂が入っているディスクパットを見つけることがあります。
このまま放置すると、摩擦材がプレートから剥離し、金属プレートでローターを止めることになり、制動力が低下して大変危険な状況になってしまいます。
亀裂の原因は、金属プレートに融雪剤等の影響による錆が発生し、その錆が摩擦材を押上げ、プレートから剥離させるためと推測されます。
ディスクパットの交換は、残厚を目安にするだけではなく、このような外観上の異状も目安に交換することをお勧めします。
特に交換サイクルが長くなる後輪(リアー)や女性オーナーの車で、冬期に融雪剤を使用する地域は注意が必要です。
亀裂が入ったディスクの裏側の様子。
錆がひどく金属プレートがデコボコしています。
危険!駐車ブレーキが効かない
4t以上のトラックで車検には合格しても、積載時に駐車ブレーキが効かないという事例が多く発生しています。
発生車両は全て、センターブレーキ式の車両です(ホィールパーク式には発生しない)。
発生原因は、ブラケットの突起部分の摩耗により、ブレーキシューがカムから外れ、ドラムの摩擦面に正常に当っていないからと推測しています(図参照)。
図に示されている通り、ブレーキシューの変形、カムの摩耗、ブラケットの摩耗が見受けられれば、駐車ブレーキの制動不足が発生する可能性が高いので該当部品の交換を推奨します。
また、日頃の点検整備において、制動部以外の摺動部へのグリスアップを実施することにより、当該事例をある程度防ぐことができます。
グリスアップは、整備の基本です。
劣化するブレーキ
建設機械、農業機械、大型遊具、クレーン、シャッター、エレベーターなどに装備されている制動装置(ブレーキ、クラッチ)の摩擦材は、一定期間使用すると必ず磨耗、あるいは硬質化して制動力が低下し、万一の場合、事故につながる恐れがあります。
弊社では、磨耗、あるいは硬質化した摩擦材を張替えることにより制動力を回復させます。
摩擦材の張り替え
ブレーキには、磁力や電気的な力、オイルなどの流体抵抗、さらには空気抵抗を利用したものもあるが、一般的には自動車に見られるように摩擦によって運動エネルギーを熱エネルギーに変換する機械的ブレーキが主流である。
いずれの装置にせよ、ある程度使用すれば、物理的、物質的に劣化して制動力は低下していく。
特に温度変化の激しい機械的ブレーキは、定期的な摩擦材の交換が必要な場合が多い。
また、北海道をはじめ降雪地帯では、融雪剤による腐食の影響で劣化が激しくなっており、出来るだけ早めの点検・修理が望ましい。
- モーターブレーキ
- 遠心クラッチ
- テスターブレーキ
- シャッターブレーキ
- バンドブレーキ
摺動面の研磨加工
制動装置(ブレーキ、クラッチ)には、回転などの運動をしながら直接摩擦材を押し当てられる部分がある。これを摺動面と呼ぶが、この部分は摩擦材の影響で傷が入り、摩耗もしてくる。
特に摩擦材を交換した時には、傷や変摩耗により新品の摩擦材との当たりが悪いため制動不足を起こす場合が多い。
摺動面に研磨加工を施して摩擦材との十分な当たり面を確保することにより、正規の制動力が得られます。
ローター研磨
「ローター研磨なんてどこでもできる」、そう思っている方、正解です。
整備工場や加工業者などでは、ローター加工の専用機を持っているところもありますので、お近くでも施工可能なところはあると思います。
一方で、「ローター加工はもうコリゴリ」と思っている方も結構お見えになるのはご存知でしょうか?
残念ながら、すべての整備工場や加工業者がローター研磨の重要性を本当に理解しているとは言い難く、業者によっては十分な加工精度が出ていないことがあり、ローター研磨の結果ブレーキフィーリングが悪化したということが実際にあるのです。
一般的に、ローターの平行度、平面度は0.05mm以内でないとドライバーが体感できると言うほど、その平行や平面が重要です。よりスピードの高いサーキット走行や、緻密なコントロール性を求めるモータースポーツでは、もっともっと高い精度で研磨する必要があります。
一般的には、車両からブレーキローターを外さず研磨可能なローター研磨専用機、ローターを外して施工するローター研磨専用機、汎用の旋盤などで研磨加工を行いますが、ローター研磨だけのために簡素化された機械より、オーバースペックであっても、 機械自体の剛性が高い大型の旋盤で加工した方が良いと考えています。 当社では、ワークのしっかりとした旋盤をローター研磨専用機にチューニングすることで、高精度を実現しています。
フライホイル研磨
商用車・大型車を中心に燃費性能の良さなどから、マニュアルミッション車は今でも広く普及しています。
エンジンの動力を伝えるクラッチ部品の中に、ブレーキと同じ素材の摩擦材が使われています。 クラッチディスクと言われる円盤状の部品です。
この摩擦材が擦り減ると、スムーズに動力の伝達が行われなくなります。「クラッチが滑る」という現象です。
この場合は、クラッチディスクを新品に交換するとともに、フライホイルの摺動面を研磨することで、より効率的な動力伝達が甦ります。
ただし、厳しい環境で酷使されるフライホイルには、必ず熱変性の跡(ヒートスポット)がありますので、弊社では砥石をかけて平面度を出しています。 クラッチカバーのプレッシャープレートにも同様の処置をしております。
レコード盤摩耗
ブレーキローターの回転方向に無数の筋傷が入ることを、一般的にその見た目から、「レコード盤摩耗」と言います。これは、使用しているブレーキパッドが適切な条件で使えていなかったりパッド自体に問題があったり、キャリパーの作動不良などが最も多い原因です。
こうなってしまうと、正常な摩擦は望めず、同時に直径方向にも凸凹やテーパーが発生しています。
また、一度レコード盤になってしまえば、新品のブレーキパッドに交換しても、ブレーキの圧力は均一に掛かりませんし、平面度はめちゃくちゃですので、ペダルタッチも改善しません。ブレーキパッドの早期摩耗の原因にもなります。
この例では、摩耗が酷く弁当箱状凹にも摩耗しちゃってますね…。
そのまま使用を続ければ程度はドンドン酷くなっていき、あまりに程度が酷くなると、ブレーキパッドは使用不可、ブレーキローターも研磨ができないほど深く傷ついてしまうことがありますので、早めの研磨がオススメです。
早期発見して研磨メンテナンスをすることで、ブレーキパッドの交換を回避することもできますし、ブレーキの効きやタッチ、コントロール性の改善にもなります。
ローターの摩耗限界(研磨限界)
ブレーキローターには摩耗限界、または研磨限界があります。これは、これ以上摩耗、あるいは研磨した場合は危険ですよ。というメーカー側からの数値です。
ローター自体の強度や熱容量なども検証されて、この限界数値が決められていますが、根本の部分はもっと簡単で、かつ重要です。
この数値より摩耗、または研磨によって薄くなった場合に、ブレーキパッドがフル摩耗する(なくなってしまう)と、キャリパーのピストンが脱落してしまいますよ。という数値です。中古販売または研磨をする際はこの数値を必ず守りましょう。